ピッチャーの勝ち運を調べてみた! ①思考実験
防御率がいいのに、勝ち星に恵まれない投手がいます。
一方で、防御率があまりよくないのに勝ち星に恵まれる投手もいます。
今シーズンの山本由伸投手の勝ち運について、独自の観点で考察していきます。
目 次
勝敗と防御率の関係
上は山本由伸投手(オリックス)の2019年の成績です。防御率はとても優秀ですが、その割には勝ちが少ないです。
下は多和田真三郎投手(西武)の2018年の成績です。多和田投手はこの年に最多勝に輝きましたが、山本投手と比べると防御率では劣ります。
運と実力の見分け方
運と実力の両方を数値化し、それらを比べます。
ここでは運は「勝った確率」で、実力は「投球内容」です。
投球内容が良かったのに勝てなかった場合は勝ち運がない、逆に投球内容の割には勝てたのなら勝ち運があったと言えます。
投球内容を評価する指標
まずは、運に関係のない、実力を示す指標を考えていきます。
防御率がいい投手は、相手に点を与えにくいので勝ちやすいと言えます。また、長いイニングを投げられる投手は、勝ち投手の権利を得るまで投げ続けることができます。
そこで、防御率と投球回数を使って、“勝ち投手の権利を得る確率”を表せるはずです。
そこで Y=(投球回)/(防御率) という指標を考えました。
- 投球回が多いほど大きい(=Yが大きいほど勝ち投手の権利を得やすい)
- 防御率がよいほど大きい(=Yが大きいほど点を取られにくい)
という特徴をもった指標です。
例えば、
となり、山本投手の方が“多く勝てる”と期待できると言うことができます。
今回は、この指標を使って投手の実力を測っていきたいと思います。
勝ち運を評価する指標
はじめに X=(勝率) を考えると、Xは勝つほど、負けないほど大きくなります。
しかし、Xが大きいほど勝ちやすいとは限りません。例えば、25試合に登板し180イニングを投げて防御率1.35、6勝1敗という成績を残した投手の勝率は.857になりますが、投球内容の割には勝ちが少ないように思えます。
Xの代わりに、勝ちの数を反映した他の指標を考えてみます。
(1)X'=(勝率)/(登板数) を導入してみます。まず、X'は勝率が高いほど大きくなります。また、同じ勝率であった場合は登板数が少ない投手(効率よく同じ勝率を残す投手)の方がX'は大きくなります。X'が大きいほど、効率的に高い勝率を残していると言えます。しかし、X'は25試合に登板し18勝3敗(勝率.857)の投手と6勝1敗(勝率.857)の投手を区別できません。
(2)そこで、X''=(勝率)×(勝利)/(登板数) を導入します。X'では登板数が同じ18勝3敗の投手と6勝1敗の投手を区別できませんでしたが、X''を用いると明確に区別できるます。X''が大きいほど“勝ちやすい”と言えます。
したがって、X''=(勝率)×(勝利)/(登板数) を使うことにしました。
例えば、
- 山本投手(勝率.571、8勝、20登板)は X''=0.228
- 多和田投手(勝率.762、16勝、26登板)は X''=0.469
となり、多和田投手の方が多く勝てたと言うことができます。
X''=(勝率)×(勝利)/(登板数)
(X''が大きいほど実際に多く勝てた)